漂流・横滑り [ナツ旅]
<Canon F1/FD 55mm F1.2/Kodak TRI-X 400>
ゆっくりでも前に足を進めていることが大切だとあの人は云います。
ただあまりにも景色が変わらないのです。
一瞬の感動はあっても連鎖せず、ただただ歩いていると
何か足枷のようなものを嵌められた囚人の行進のような気がするのです。
立ち止まったら世界が変わって見えたと彼の人は云います。
一時の嬌声も上げることができず、ため息すら見咎められ、
地面を擦る足音も大きく世界に反響するのです。
傾斜30度の坂は、三角定規だと緩やかですが実は急斜面です。
僕は、その坂から静かに音を立てて、盛大にずり落ちているような気すらするのです。
100年に一度が連呼され、デジャブをまた見たような3度目の既視感と
嵐の前のあまりもの静けさ。光の重力があまりに重すぎて、心が横滑りしています。
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